2025.08.28 Result

【レポート】第94回全日本自転車競技選手権 - トラック

2025年8月22日(金)~25日(日)
場所:静岡県・伊豆ヴェロドローム
出走選手:窪木一茂
種目:エリミネーション、スクラッチレース、オムニアム、4㎞個人パーシュート

愛三工業レーシングチームとしては、4年ぶりの参戦となった全日本選手権トラックレース。
チームからの参戦は窪木のみであるが、スクラッチレース現世界チャンピオン、4㎞個人パーシュートのアジア記録保持者という中距離種目においては国内最高の実力を持つ選手であることから、出場種目全てにおいて優勝の期待がかかる。

【DAY 1】 🏁エリミネーション
2周ごとに最後尾の選手が1人除外 (エリミネート)されるサバイバルレース。 「最後まで生き残った選手が勝者」となるが、持久力とスピードを持ち合わせていること、そして集団内での位置取りが重要な種目。
窪木はこの種目を得意としており、先般開催されたジャパントラックカップ(日本代表として参加)においても、強力な海外選手を相手に勝利を飾っている。レースは終始危なげない位置取りで展開。後半にかけては集団をリードする動きも見せ、最後のスプリント勝負では余裕すら感じさせるスパートで見事優勝。
幸先の良いスタートを切ることができ、2日目に弾みをつけた。

エリミネーションで優勝を飾った窪木

【DAY 2】 🏁スクラッチレース
2025年以降、男女10kmに統一となった中距離種目。ロードレースのトラック版で「1着でフィニッシュした選手が勝利」のシンプルなルール。 窪木は昨年の世界選手権にて同種目の世界チャンピオンとなっており、他選手からのマークが厳しくなることが予想された。
レースの序盤はややスローペースで進み、注目選手の出方を探るような展開で進む。中盤以降からようやく抜け出しを計る動きが出始め、徐々にハードな展開へ移行。終盤には集団が分断する中、JPCAの橋本選手がタイミングよく単独抜け出しに成功し、そのまま一着フィニッシュを許すことになった。
窪木は後続集団で2位争いのスプリント勝負となったが、ラスト2周でポジションを下げてしまい全体の7位でフィニッシュとなった。

現世界チャンピオンとしてスクラッチレースを走る窪木

【DAY 3】 オムニアム
自転車トラック競技のオリンピック種目であるオムニアム。1日で4種目(スクラッチレース➡テンポレース➡エリミネーション➡ポイントレース)行い、その成績をポイントに置き換えて順位を決定する過酷を極めるレースとなっており、トラックレースの中で最もタフネスを要求される種目である。
1種目目のスクラッチでは終始大きな逃げは許さない警戒状態が続き、集団のままゴール勝負へ。
ラスト2周でうまくポジションを上げた窪木は昨日の雪辱を晴らすかのような強烈なスプリントで1着を獲得し暫定トップとなる。
2種目目のテンポレース(毎周回フィニッシュラインのトップ通過者にポイントが付与され、合計点で勝敗が決まる)では、前半で4名の抜け出しを容認する展開となるも、窪木は冷静に立ち回り、後半でタイミングよく数名で抜け出しに成功。順調に得点を重ねたものの巻き返しは僅かに届かず、この種目を3着とし。総合暫定1位をキープ。
3種目目のエリミネーションは少しでも良い順位でポイントレースを迎えたいという各選手の思惑も手伝ってか、終始ハイペースで進む。
中盤には落車が発生し、一時ニュートラルとなったことで展開が変わるも、窪木は冷静に切り替えレースを有利に進めていく。
最終盤では積極的に展開したものの、マッチアップとなったスプリントでJIKの兒島選手に競り負ける結果となり、この種目を2着とした。
4種目目は最終決着となるポイントレース(10周回ごとに1位〜4位に対して5点、3点、2点、1点のポイントが与えられる。 フィニッシュ着順では2倍のポイントを、レース中に集団に1周差をつければ20点を獲得できるので、一発逆転のチャンスも。 最終的に合計ポイントを最も多く獲得した選手の勝利となる)で争われる。
窪木は3種目終了時点で暫定1位の兒島選手と同点の2位につけており、お互いに牽制しあう展開になることが予想され、最悪の場合は3位以下の選手に隙をつかれ逆転される危険性もある緊張感の高いレースとなった。
レースはポイント差のある選手が積極的に抜け出しを計り、1周差をつけて大量得点を狙う動きが活発になったため、落ち着きのない展開となる。窪木と兒島選手は互いに意識しながらも、周囲の追い上げも看過できない状況となり、これを打破すべく中盤から窪木が仕掛け始める。兒島選手はこの動きにしっかり反応。さらにはカウンターを仕掛ける攻防戦となるが、兒島選手のパフォーマンスが窪木を上回り、じりじりと差を広げられてしまう。
さらに終盤ではメカトラによるバイク交換でリズムを崩し、順位を下げてしまったものの、最後まで追い上げの動きを見せ、最終順位5位でのフィニッシュとなった。

メカトラに見舞われながらも最後まで追い上げを試みる窪木

【DAY 4】 4km個人パーシュート
25年2月に行われた「アジア選手権トラック2025」の同種目において4:08.669のアジア、日本新記録をマークし優勝を飾っている窪木。アジアチャンピオンジャージを纏っての出走ということも相まって、この種目の優勝、記録更新の期待が高まる。
予選では安定したラップを刻み、難なく予選を通過。迎えた決勝ではスタートからハイペースを刻み、大会記録更新を期待させる力走を見せた。後半わずかにペースを落としたものの最後まで踏ん張り、見事追抜き勝ちで優勝を飾った。

アジア・日本記録保持者の実力を発揮し優勝を決めた窪木

世界でもトップレベルの実力を持つ窪木は、ライバル勢のマークも厳しく、苦戦を強いられた場面もあったが、全体を通して高いパフォーマンスを発揮し、4種目中2種目を制しその力を示した。

窪木はこれから迎えるトラックシーズンに照準を合わせ、さらなる高みを目指して戦います。
今後とも皆様の応援よろしくお願いいたします。

【エリミネーション 結果】
1位 窪木 一茂 愛三工業レーシングチーム
2位 兒島 直樹 JIK
3位 橋本 英也 JPCA

【スクラッチレース 結果】
1位 橋本 英也 JPCA
2位 岡本 勝哉 チームブリヂストンサイクリング
3位 河野 翔輝 チームブリヂストンサイクリング
7位 窪木 一茂 愛三工業レーシングチーム

【オムニアム 結果】
1位 兒島 直樹 JIK
2位 橋本 英也 JPCA
3位 梅澤 幹太 チームブリヂストンサイクリング
5位 窪木 一茂 愛三工業レーシングチーム

【4㎞個人パーシュート 結果】
1位 窪木 一茂  愛三工業レーシングチーム 追抜勝
2位 伊澤 将也  Radical Aero Club
3位 山本 哲央  チームブリヂストンサイクリング

Text : Taiji NISHITANI
Photo: Keita YAMAUCHI

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