2024.05.29 Result

【レポート】Tour of Japan 2024

今年のTour of Japan は昨年に続き8日間での開催となり、愛三工業レーシングチームは岡本、草場、石上、西尾、當原、初川の計6名で参戦。 全体としては個人総合成績で石上、ステージでは岡本、草場、石上での勝利を目指した。

最新のエアロヘルメットでタイム短縮を狙う石上

【堺ステージ】2024年5月19日(日)

堺ステージは2.6㎞のショートタイムトライアル。
天候が雨ということと、風向きの予報からエースメンバーを前半組に設定し、少しでも有利な条件でタイムを稼ぐ事を狙っていく。
午後になり、雨脚が強くなってきたタイミングでタイムトライアルがスタート。
全選手慎重にスタートし、コーナーも気を使いながらの全力アタックをしていくが、チーム2番手出走となった草場が滑りやすいコーナーでタイヤのグリップを失い転倒。その後自力で完走を果たし、DNFは免れたものの、チームとしてはエースメンバーの落車という手痛いスタートとなった。
最終結果はアスタナカザクスタンのマックス・ウォーカー選手が2位以下に8秒以上の差をつけての圧勝となり、チームとしては岡本がトップから12秒遅れとなる16位が最高位となった。

絞られた集団ゴールで4位に食い込む草場

【京都ステージ】2024年5月20日(月)

京都ステージで草場4位、岡本6位と健闘

京都ステージは激しいアップダウンをリピートするレイアウトでありながら、例年小集団スプリントになることが多いステージ。
逃げ切りの可能性はあるが、チャンスは僅かとなる。
チームとしては、石上の個人総合ジャンプアップをメインに置き、前半の逃げに草場、當原、西尾、初川のうち1名を送り込む事、後半のアタックの動きに岡本、石上で対応し、抜け出しのチャンスがあればトライする事とした。

レースは山岳賞を意識したアタック合戦で、抜け出しのタイミングが難しい状況が続くが、2周目には4名の先行グループが形成され、メイン集団とは最大2分強の差で推移する。

メイン集団はリーダーチームのアスタナ、JCLが主体となってコントロールを開始し、最終周回の登坂区間では先行していたメンバーを全て吸収。
その後も集団はハイペースを刻み続け、カウンターアタックなどのアクションは取れない状況となり、最後は40名強の集団スプリントへ。
混沌とした集団の中で、この位置に残った草場、岡本、石上がスプリントにトライするが、惜しくも草場4位、岡本6位、石上20位でのフィニッシュとなった。

終盤の動きに備えるべく前方に位置する石上

【いなべステージ】2024年5月21日(火)

通称「いなベルク」と呼ばれる急勾配の登坂区間が難所となる本コースは、登り口から道幅が狭く集団は1列棒状となり、集団の後方に位置すると勝負所での動きに反応できずチャンスを逃してしまう恐れがある。

個人総合時間で大きく後れを取らないよう、前半の集団内の動きは注視しつつ、後半の攻撃に反応できるよう石上、草場、岡本を前方に位置させるよう當原、西尾、初川でサポートする事とした。

レースは前日から強風が吹きつけており、レース展開に影響を及ぼす事も予想されたが、前半の動きが活発になる事はなく、登坂区間のみ揺さぶりでペースが上がる展開で周回を重ねていく。

行程の半分が過ぎた頃、登坂区間でのペースアップをきっかけに7名が飛び出しに成功。ここに草場がすかさず合流したものの、強力なメンバーで形成されたグループのハイスピードに耐え切れず離脱。これにより先頭は6名となるが、ペースが緩まることなくメイン集団との差を拡大していく。

アスタナカザクスタンがメイン集団をけん引し、追走の動きを見せるものの効果的に差を埋めることが叶わず、最終的に5名となった先行グループが逃げ切りを果たす結果となった。後続のメイン集団では岡本、石上が残り、集団の先頭で岡本がゴールし、このステージ6位、石上も同タイムの14位でのフィニッシュとなった。

実力者5名の逃げ切りとあって、このグループに石上を送りこめなかったことが悔やまれるが、メイン集団内でのゴールで翌日以降の戦いに繋ぐことができた。

ホームステージとなる美濃ステージでは最前列スタート

【美濃ステージ】2024年5月22日(水)

我々のホームステージとなる美濃ステージ。

コースは1か所KOMが設定されているものの、低い丘を越える程度で展開を左右するほどのインパクトはなくほぼフラットなレイアウトであることから、例年集団ゴールスプリントに持ち込まれる事が多い。

チームとしては石上の個人総合成績を守ること、集団ゴールで岡本が勝負できるよう、アシストを集団牽引に送り込み、確実にスプリントに持ち込めるよう展開していくこととした。

レースは前日の展開とは一転してアクティブなアタック合戦が繰り広げられ、2周目の山岳ポイントをきっかけに4名が抜け出し、メイン集団との差を2分強まで稼ぎだした。
すかさずリーダーチームであるJCLが集団牽引を始めたところで西尾を送りこみ、先行グループとの差が開かないようコントロールし、じわじわと差を縮めていく。
しかし、終盤で先行していた4名から総合で1番タイム差の少ない選手が下がってきたことにより、JCLの追走の手が緩み、50秒まで縮まったタイム差が一気に拡大。
西尾も追走で使い果たし脱落という状況と、他チームとの思惑が一致しなかったことから迷いが生じ、追走しきれないまま最終局面を迎え、結果として2名の逃げ切りが確定。
メイン集団でスプリントした岡本もうまく連系がとれず、11位でのフィニッシュとなった。

勝利を見定め慎重にレースを進めたものの、最終段階での動きを選手と擦り合わせできていなかったことが本レースの敗因とも言え、監督を務めた私自身の落ち度である。
悔いが残るレースとなったが、残り4日間、石上の個人総合と各ステージでの勝利を狙い、気持ちを切り替えて臨むこととなった。

前半の動きに対応する岡本

【飯田ステージ】2024年5月23日(木)

TOJの個人総合時間を争う上では富士山ステージに次ぐ重要なステージ。

チームとしては石上の個人総合時間でのジャンプアップを狙うべく、前半から攻撃が活発になる事を見据え、チームでバックアップしつつ積極的に石上を動かすことでチャンスを広げていくこととした。
レースは主要チームの強力なメンバーが逃げを試みる動きが活発になり、早々に岡本を含む14名ほどの大きな先行グループが形成される。
本来であれば、石上を送り込む算段であったが、JCLが素早く集団コントロールに入ったため切替えて後半の動きに備える。
先行グループのペースは一旦落ち着いて推移していたが、中盤に入り、再度ペースアップの動きが出始めた事で岡本が脱落。
先行グループは人数をみるみる削り、終盤にはアスタナカザクスタン2名のみが先行するハードな展開となるが、JCLの力強いコントロールで最終周回の登坂区間で全ての選手を吸収。
このカウンターで石上も攻撃に転じるが、終盤で残っているメンバーはさすがの猛者揃いで簡単には抜け出せない。最終局面ではアスタナカザクスタンのヴィノクロフ選手が最後まで攻撃を続け、後続に差をつけて優勝。
後続のメイン集団に残った石上、草場も上位ゴールを目指すが、草場の12位がチーム最高位となった。
このステージで石上のタイム差を稼ぐことを目標としていたが、結果的に集団と同タイムゴールとなり、勝負は富士山ステージへ持ち越すこととなった。

最後まで力を振り絞る石上

【富士山ステージ】2024年5月24日(金)

いよいよクイーンステージとなる富士山での戦いを迎える。

実質的にこのステージで個人総合時間順位が決定すると言っても過言ではなく、ここまでアドバンテージを得られなかった分、このステージで真っ向勝負を挑むこととなる。

チームは最後の富士山麓の上り初めまで石上を前方に位置させ、少しでも有利な条件で勝負に挑めるよう全体でサポートすることとし、最大限の努力を目指す。

レースはポイント賞を狙った動きで少人数の先行グループが形成され、JCLがコントロールする展開で周回を重ねるが、安定したコントロールを前に大きな差を稼ぐことは許されず、本格的な登坂区間を前に全ての選手を吸収。
チーム全体で位置取りし、予定通り富士山の麓まで石上を前方の位置へ送り届け、ここから石上単騎での戦いとなる。
山岳スペシャリストが揃ったメイン集団のペースは速く、九十九折区間に入る手前で集団から脱落した石上は後半で大きく失速しないよう自分のペースに切り替える。
残り6㎞は急勾配が続き、前方から遅れてくる選手をかわしながら石上は粘りを見せるものの登坂の厳しさにペースは上がらず、最終的に26位でフィニッシュとなった。
この結果、個人総合成績でも21位と実質逆転が不可能な状況であることから、残り2日間はステージ優勝のみに注力して最後まで戦う事を誓った。

終盤に形成された6名の先行グループで奮闘する草場

【相模原ステージ】2024年5月25日(土)

残されたチャンスは残り2ステージ。

相模原ステージは起伏に富んだレイアウトでコース難易度としては高くないものの、ステージ狙いの動きが激しく、展開を作る上での難易度が高いため、チーム全体で機能することが要求されるステージである。

前日の結果から、我々が目指すべき目標はステージ優勝のみ。
岡本、草場、石上をメインに常に先手を取るべく、逃げの動きには常に石上と岡本、草場のどちらかを乗せる動きをとり、逃げ切り、集団スプリントのどちらでも勝負できるよう展開していく事とした。

レースはスプリントポイントでポイント賞争いと総合時間賞の双方で思惑がぶつかり合う一進一退の目まぐるしい展開で進行。
一時は石上、岡本が抜け出すなど良い形での攻撃を仕掛けるが、集団も追いすがり決定的な逃げが形成されない状況が続く。
その後、行程の半分をすぎたタイミングで草場を含む6名が飛び出しに成功。この状況から愛三としては草場の逃げ切りを視野に入れつつ、集団スプリントになった場合は岡本で勝負する体制が整った。
残り周回も僅かとなった頃、ナショナルチームがレースを振り出しに戻すべく、強烈なペースアップで先頭の6名を追走する展開となり、ラスト1周を前に先行グループを眼前に捉える。
この流れを利用し、アスタナカザクスタンのマックス・ウォーカー選手とナショナルチームの児島選手が先行6名へブリッジする動きが生まれ、先頭は8名となって再度差を広げ始める。ここには草場が懸命に喰らい付くが、マックス選手の登坂区間での再加速についていけず脱落。先行は3名となる。

残り1周、他チームと協力する形で石上が集団牽引し、岡本のゴールスプリントを目指すが、先頭3名を捉えきれないまま混沌としたゴール勝負となり、岡本はこのステージ5位でフィニッシュとなった。

最終局面でのマックス・ウォーカー選手の攻撃は想定を超える爆発力であったため、反応は難しい状況であったと推察されるが、ギリギリの戦いの中でベストを尽くせたように思う。
悔しいレースが続くが、残りの東京ステージに全てをかけるのみとなった。

集団ゴールに持ち込むべく牽引する愛三工業レーシングチーム

【東京ステージ】2024年5月26日(日)

迎えた最終日の東京ステージはオールフラットのスプリントステージ。
我々としては集団スプリントに持ち込み雪辱を晴らしたいステージとなる。

前半は強力な逃げができないようチェックし、大きい動きには石上が主体となって対応。小規模の逃げが決まった場合はすかさずコントロールに入り、アシスト総動員で岡本のスプリントをお膳立てする構えでスタート。

レースはポイント賞のかかった動きがメインとなり、要所ではシマノが集団コントロールをする動きが目立つ。2回目のスプリントポイントを過ぎたタイミングで逃げの動きが活性化し、7名の先行グループが形成される。
この状況からすぐさまチームで集団前方を固め、追撃態勢を整える。
追撃にはシマノも加わり、30秒ほどあった差を最終周回までに全て回収し、集団ゴールスプリントでの勝負に持ち込んだ。
終盤で落車の影響を受けた岡本が一時ポジションを下げるが、残り僅かのところで草場と再合流を果たし、絶好のポジションからスプリントを開始。
持てる力を全て発揮した岡本であったが、わずかにJCLのマルチェッリ選手が勝り、最終東京ステージは3位でのフィニッシュとなった。

岡本が惜しくも3位

【総括】

最終日は完璧なレース運びを選手らで展開してくれたが、あと一歩届かず一勝の難しさを痛感するステージであった。
美濃ステージの失敗はあったものの、ツアー全体を通しては、選手全員で日々改善し、作戦を確実に遂行する中で最大限の努力をしてくれたことと思う。
海外勢に対抗できるだけのチーム力が足りなかったことは否めないが、アジアツアーで再度勝利する事を目指し、見えた課題を一つ一つクリアしていくことに注力していきたい。

TOJの8日間を最後まで応援いただきありがとうございました。
引き続きみなさまの熱い応援よろしくお願いいたします。

Text:Taiji NISHITANI
Photo:Ayumu WATANABE

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